株式会社スドージャム 代表取締役社長 須藤尚孝/株式会社エフインク 代表取締役 萩原房史

株式会社スドージャム スドージャム

[ F-INC.サポート・プロジェクト ]
ステートメント開発
スドージャムのブランドシンボル開発
信州須藤農園のブランドシンボル開発
象徴商品/信州産 紅玉ジャム開発
定番商品/100%フルーツのデザイン開発

大正12年(1923年)から愛され続けているジャムメーカー「スドージャム」。北アルプスに囲まれた信州松本の地で産声をあげて以来、果物のおいしさを追求し、日本中の家庭の食卓を彩ってきた。今回のBRANDing STORYでは、スドージャムをけん引する須藤尚孝氏と、ブランディングカンパニーF-INC.との融合のストーリーを紐解き、その美味しさに秘められた想いに迫った。

ブランド誕生おいしい素材を大切に

須藤大正12年、創業者・須藤正馬が日本酒の造り酒屋として事業を開始し、味噌、醤油、漬物なども手掛けるようになりました。そして終戦後、食品が不足した荒んだ環境の中で、砂糖と塩の重要性を考えるようになり、1950年にジャムの専業メーカーになりました。現在では、全国のスーパーで展開させて頂いております。

萩原お聞きした話では、信州の旬の紅玉リンゴを使ったジャムを生産されたことが、ジャム専業メーカーの起源になったそうです。もともと長野で事業をスタートされた時、おいしいリンゴが豊富にある地域性を活かし、良い素材を大切にして多くの方に召し上がってもらうことを追求されていたので、果物に対するこだわりがとても強い。今でも各地から本当に品質のいい果物を取り入れて商品を作っておられますが、もともとあった「おいしい素材を大切にする」というブランドの本質を受け継がれているように思えます。

須藤そうですね。現在では、お求めやすい価格でバリエーションもたくさんある『スドージャム』と、弊社の最高級ブランド『信州須藤農園』という二つのブランドを軸に事業を展開しています。『信州須藤農園』は、もともと子会社だったのですが、これをトップブランドとしてスドージャム本体に取り込みました。

萩原『信州須藤農園』の100%フルーツは、素材にこだわって砂糖を使わず果物の甘味だけで作られているので、多くの根強いファンの方がいらっしゃることでも有名です。

両者の出会い品質と歴史を活かす

萩原当時スドージャムの社長だった須藤正嗣さんと経営塾の同期だったんです。同期の中で親しくさせて頂いていたこともあり、ブランドの見直しを図る際にお声掛け頂いて、今回のプロジェクトがスタートしました。

須藤今回ブランディングを図るにあたって、経営理念自体は創業時からの想いを継承しています。この理念をどのように事業として方向づけていくか、商品に落とし込んでいくかという点で、エフインクさんにお手伝いして頂きました。

萩原スドージャムの経営陣の皆様と合同のワークショップ形式でプロジェクトを進行しました。マーケットでは、激しい価格競争や様々なプライベートブランドが乱立し、なかなか付加価値の高い商品を作りづらい市場背景がありました。ジャムメーカーとしての素晴らしい品質と歴史、そして誇りを持っているので、それをどう活かすか手腕が問われました。

須藤今までブランディングやロゴなど無頓着で来てしまって、ジャム自体は良いものを作ったとしても、それをどういう形で見せるかという「見せ方」が上手ではありませんでした。世の中にスドージャムを浸透させていくためには、しっかりとしたCI(コーポレートアイデンティティ)を確立し、ブランドマークも見直して浸透させる必要があったのですが、それをどのように実行するのか、エフインクさんと何度も協議を重ねました。

ロゴマークとステートメントおいしい笑顔

萩原ロゴマークは、笑顔が想起できるシンプルなデザインを心がけました。スドージャムさんは様々なパッケージで商品展開されているため、一つの「印鑑」のように、どこにでも刻印できるデザインも考慮に入れています。1923年創業という歴史と、新しいものにチャレンジしていくという想いをコーポレートシンボルに込めました。

須藤こちらのロゴマークに決定した理由は、作って頂いた複数のデザインを見比べて、まず赤色が鮮やかで温かみがあるため、食品を扱うメーカーに適していることが挙げられます。これからさらに良い商品を出していくにあたって、今までの垢抜けないデザインを脱し、洗練されたお洒落なテイストになったと思います。さらにステートメントを反映したスマイルマークも違和感なく入れて頂きました。これを見ていると、本当に人の笑顔に見えてくるんです(笑)。

萩原「おいしい笑顔」というステートメントは、理念を社内と社外に浸透させるために提案させて頂きました。社是や経営理念やビジョンだけをみると、一般の方や末端で働く方々には近寄りづらく、伝わりづらい面もあるように思えました。こうした会社の理念を、誰でも分かり、すぐに憶えることができるフレーズに凝縮しました。

須藤新しく理念を創りましたが、これを社内全体に浸透させることは難航していました。こうした中、社員たちの中から、理念を浸透させるために色々やらせてくれないか、というとても意欲のある方々が現れ始めました。彼女たち曰く、理念といっても難しくて、理解しづらく、親しみ感もないので、まずはそこから手を付けてはいかがですかとのことで、「3S(スドー・スマイル・スペシャリスト)」という活動をスタートしました。社員の良いと思う点を書く紙を置いて、投書箱に入れると、それが給与明細と一緒に渡される仕組みや、「わが家のおいしい笑顔」を表彰する笑顔の食卓コンテストを開いたり、毎月14日を「おいしいジャムの日」として、弊社の製品を使ったレシピを作ったり、社員が自発的に始めてくれました。自分たちは「おいしい笑顔」を創るんだ、ということが皆の合言葉になれば良いなと思います。

萩原理念から抽出したステートメントが、新しく自発的に行動を促すような構造に繋がっていることをお聞きして、すごく感動しています。そういった行動を起こしてくれる人がいるというのは、本当にありがたいことですよね。

須藤おいしい笑顔」を創って届けるためには、まずは自分たちが笑顔にならなければいけないのではないかという声が上がりました。「3S」は、自分たちが笑顔になれることをはじめることでした。そうすれば「おいしい笑顔」というステートメントにも共感が持てて、経営理念も親しみをもって理解し、実践してくれるのではないかと期待しています。

須藤ブランドというものは、こうした「歴史」「文化」を伝えていくことをしないと、残せないのかもしれませんね。

萩原ブランディングをお手伝いさせて頂く際、新しいブランド名を付けてかっこよく見せればお客様に支持されるものではなく、持っているブランドの良さや強みを認識して、それをどのように活用し、伝えていくのかが大事だと思っています。例えば倉敷帆布さんのロゴなども、目新しいデザインにするべきだとは思っておらず、古き良きものをずっと大切にしていることの方が良かったりするわけです。そういった「歴史を尊重する姿勢」と、「未来へ繋げる挑戦」が撚り合わさったのが、今回のブランディングだと思います。

象徴商品『信州産 紅玉ジャム』の誕生

萩原生産機能を活かしながら比較的リーズナブルな商品を大量生産していくのか、それとも付加価値の高いブランドとして確立するのか、まずスドージャムさんがこれからどういう方向に進んでいくのかが一番のテーマでした。ブランド会議を重ね、その2つの方向性を両立させ、お求めやすい『スドージャム』ブランドの再構築と、素材を選りすぐった高品質な『信州須藤農園』ブランドの確立をするという結論にいたりました。そして、その展開として私たちに象徴商品『信州産 紅玉ジャム』の開発と、定番商品『100%フルーツ』のリニューアルデザインを任せて頂くことになりました。

須藤『信州須藤農園』を会社の中のブランドの頂点に据え、2013年には創業90周年を迎えました。そうした中で萩原社長から、マーケットの制約を全て取り払ってみてはいかがですか、という非常に良いご提案を頂きました。今までは「マーケット・イン」でしたが、はじめて「プロダクト・アウト」を行ってみようと決心したのです。90周年の記念品ということで、弊社の全ノウハウを集約して、スドージャムの技術の粋を皆様にお見せできればと思って取り組みました。

萩原スドージャムさんは創業の頃から、信州のリンゴを使ってジャムを作っていた経緯があったので、できるだけそのリンゴの味を活かす商品にしていこうと話し合いました。信州の取れたてのリンゴを使い、その他の素材も最高のものを選び、そこに最高の技術を投入して作り上げたのが『信州産 紅玉ジャム』です。

須藤売るのではなくお配りする目的でしたので、コストや原価などを考えず、「作り手自身が本当に作りたいものを作ろう」と団結しました。使っているリンゴは「紅玉」という品種で、本来はお菓子やジャムを作るのに適しているのですが、生で食べると硬くて酸味が強いので、より甘くサクッとした触感のフジ種が好まれるようになり、現在では希少になって価格が高騰し、ジャムの原料として使えない状況になっています。そうした中でもあえて紅玉リンゴを使うことにこだわり、しかも選りすぐりの畑から最高品質のリンゴを調達し、頂点を極めるジャム作りを目指しました。メーカーとして本来あるべき姿、「原点」に回帰しようという試みですね。

萩原3つの商品を同時に作ったのですが、1つが旬の紅玉を用いた『旬』という商品で、紅玉の天然の色素がキレイに滲み出たジャムです。

須藤こちらは『信州須藤農園』の中の最高品質の商品で、果実含有量が80%、砂糖不使用です。『旬』という名前にもあるように、旬な高級リンゴの素材の味を堪能して頂きたいので、「余計なものは加えず、在るものは削らない」、オーセンティックなジャムです。やはり「基本」は大切ですよね。

萩原2つ目が『丸』という商品で、シャルドネワインを贅沢に使いコンポートした特製ジュレに、皮を剥いて芯を繰り抜いた紅玉を丸ごと漬けています。3つ目が『香』という尚孝さんが考案された商品で、「焼きジャム」という新しい領域を開拓した世界で唯一のジャムになります。

須藤先程の『旬』は基本になる製品とすると、『丸』と『香』に関しては、少し私たちの「遊び心」をジャムに込めたといった感じですね。『香』は「焼きジャム」なので、パンをトーストしてから塗るのではなくて、パンに乗せた状態で焼いて食べるジャムです。通常ジャムは加熱すると溶けてパンに浸み込んでしまうのですが、耐熱性を考究して焼いた時にとろりとした舌触りを生み出すのが特徴です。香り立ちのいい最高品質のセイロンシナモンと、キューバ産の7年熟成ラム酒など、厳選された材料を使って、まさに焼いて香る芳醇なジャムに仕上がりました。

萩原3つのジャム全てが旬の紅玉リンゴを使っているので、新鮮なリンゴだけが持つシャキシャキした歯ごたえも残っています。

須藤こちらは長野県園芸特産振興展にて「農林水産大臣賞」を受賞しました。これだけの原料を使ってもし受賞しなかったら大変でした(笑)。ジャムのネーミングから、最高峰のブランドにふさわしい重箱の様なパッケージデザインまで、一貫してエフインクさんにご提案頂きました。ギフト用には本物のリンゴをセットで封入するなどアイデアも豊富で、さすがプロだなという想いを強くしました。

萩原スドージャムさんは長年ものづくりに励んできた会社ですので、こうした最高の商品を作ることは誇りに繋がると思うんです。自分たちは真剣にやれば、これくらいのものはすぐに作れるんだという自信がある上でものづくりを進めると、また意識が一段変わってくるのではないかと思っています。

須藤こちらは、お配りしたところ反響がものすごく良くて、あるスーパーさんではお中元用に使いたいというご要望を頂いたり、取引先の銀行や保険会社さんからお歳暮に使いたいという連絡が入ったり、美味しいので購入したいというご要望が殺到しました。今では一般の方でも購入できるように、ネット通販でも販売を開始するようになりました。

定番商品『100%フルーツ』のリニューアル

須藤『信州須藤農園』の定番商品『100%フルーツ』のデザインのリニューアルもエフインクさんにご依頼しました。今までは清潔感を出すという意味でも、ラベルは白が基調になっていたのですが、他のメーカーさんとも一緒で、棚に並んでいると違いが分かりにくいという難点がありました。そこで萩原社長から、もう少しフルーツ感のある色を取り入れ、なおかつスドージャムのブランドとしては統一感を増すようなデザインのご提案があり、実行に移しました。私たちにとっては、かなり大きな冒険になりました。

萩原これは仰るように大きな冒険で、既存のお客様は従来のデザインで認知して頂いているので、ここから大きくデザインを変えていくとお客様は同じ商品だと認知できなくなる可能性がありました。ですので、今までのイメージはしっかりと踏襲しながらも、バージョンアップしてより良くなったと認識して頂けるよう、様々な配慮をデザインに投入しました。

須藤こちらの主力商品をリニューアルしたことや、社員の頑張りもあっておかげさまで昨年対比110%を実現しました。ジャムの様な成熟した市場では、なかなか凄いことだと思います。今まで取り扱っていなかったところにも、商品を置いて頂けるようになって販路の展開が広がりました。

萩原商品デザインのリニューアルと同時に、『信州須藤農園』のブランドシンボルもリニューアルしました。信州松本の北アルプスにちなんだ「山の銀座」と呼ばれる景色で、創業者がジャム専業メーカーになったときに使っていたブランドシンボルです。

須藤創業当時のシンボルマークをブラッシュアップして、トップブランドのマークにするということで、創業の頃のDNAを受け継ぐという意味でも大変良い試みだったと思います。黄金比でデザインされているらしく、シンプルですが見飽きないマークになりました。

「おいしい笑顔」で偉大なるローカル企業になる

須藤将来的に新しい工場設備を検討したいと思っています。信州の自然なイメージを製品にうまく結び付け膨らませられるような場所、安曇野なんか夢があって良いですね。そこでは大量生産品だけではなく、『信州産 紅玉ジャム』のような少ロットの製品も小回りに作れるようにしたいと思っています。工場の横にはちょっとしたジャム工房の様なものを造って、そこでジャム作り体験をしたり、カフェも併設して作りたての手作りジャムを使ったスイーツなども提供できればと思っています。

萩原いい意味でのローカリゼーションというか、その地でしかできない体験を考えられていますよね。グローバル化というのは世界に出ることだけではなく、世界の人から支持されるコンテンツをちゃんと作れば、海外の観光客の方に来て頂いたり、多くの方に商品を知って頂けるようになるのだと思います。そういう意味で、ローカルでありながら今後グローバルにも評価が高まってくる気がしています。

須藤ビジョンにもあるように“偉大なるローカル企業”を目指しているので、まずはその地域のことを念頭に置いて考え、「こころ」と「からだ」に美味しい製品づくりに徹し、そこから多くの人に伝わっていけばいいなと思っています。

萩原「おいしい笑顔」が多くの人に伝わると良いですね。本日は楽しい時間をありがとうございました。

須藤ありがとうございました。

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