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2025年08月7日

インナーブランディングとは?成功事例と施策を交えて基礎知識や疑問を徹底解説!

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ブランディングディレクター

大規模商業施設やリゾートホテルをはじめ、企業やカフェなど幅広いジャンルの案件に対し多岐にわたりブランディングを推進。『脳みそから血が出るくらい考えているか』を常に自分に問いただしながら、クライアントさえ気づけていないブランドの進むべき道や可能性、デザイン表現をご提案できるよう日々挑戦中。

はじめに:こんな課題を感じていませんか?

「理念やビジョンはあるけど、社内にうまく浸透していない気がする」「社員がもっと主体的にブランドを語れるようにしたい」「企業やブランドの独自性や新たな文化を創出したい」。そんな課題を感じていませんか?

 

インナーブランディングは、社員の共感や行動変容を通じて、ブランドの内側から本質的・長期的に強化していくための重要な取り組みです。この記事では、インナーブランディングの必要性やメリット、成功事例、具体的な進め方などを解説します。これからインナーブランディングに取り組みたいと考えている企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の主なトピックス

1. インナーブランディングとは?目的や効果を解説

2. アウターブランディングとの違い

3. インナーブランディングが必要とされている背景

4. インナーブランディングの代表的な施策例“9選”

5. インナーブランディングの成功事例“10選”

6. インナーブランディングを成功に導くポイントや注意点

7. インナーブランディングの進め方

8. インナーブランディングに関するよくある質問・FAQ

1. インナーブランディングとは?目的や効果を解説

インナーブランディングとは、企業が掲げるパーパスや理念やビジョン、ミッションなどを軸にした「ブランドの価値観」や「らしさ」を、社員一人ひとりがそのブランドを自分ごととして理解・共感し、日々の行動や判断に活かせるようにするための取り組みです。

インナーブランディングの目的と期待できる効果

インナーブランディングの目的は、企業理念や自社の価値観を社内で共有し、社員がその内容を正しく理解・行動できる状態をつくることにあります。企業活動を安定的に進めていくには、組織全体で価値観や考え方をそろえ、同じ方向を目指すことが欠かせません。インナーブランディングは、単なるロゴやスローガンの共有だけでなく、その土台となる「この会社は何を大切にしていて、どんな価値を社会に提供しているのか」を社内外に伝えていくための重要な施策です。

インナーブランディングにより期待できる効果の一例

効果例1:ブランドにふさわしい行動が自発的に増える

理念やブランド価値などに沿った、ブランドにふさわしい行動が自主的に取られるようになるため、他にはない独自性ある企画や商品開発、広告・PRにつながります。

効果例2:組織の一体感や連携強化・イノベーションの創出

部門間や職種の壁を越えて、全社で一体感を持ち同じ方向に向かうことができるようになるため、一体感やコミュニケーションの向上、新たなイノベーションを生み出しやすい環境が構築できるようになります。

効果例3:従業員のモチベーション・主体性・満足度向上

自社への誇りや仕事へのやりがいを持ち、前向きに行動できる状態を作ることで、会社に対する信頼や愛着が増し、定着率が高まります。

効果例4:ブランド価値の体現者を増やし、サービスや商品品質の安定・向上

社員自らがブランドの価値や強みを理解し、顧客や社会に一貫した価値を提供することができるため、品質が安定・向上する他、さまざまな提供価値のブレが減ります。

効果例5:ブランド価値の体現者を増やし、サービスや商品品質の安定・向上

社員自らがブランドの価値や強みを理解し、顧客や社会に一貫した価値を提供することができるため、品質が安定・向上する他、さまざまな提供価値のブレが減ります。

効果例6:採用力・企業イメージの強化

社員の生の声や雰囲気などが外部に伝わりやすくなるため、採用などにも良い影響を与える企業イメージの向上につながります。

社効果例7:外ブランディング(広告・PRなど)の効果を最大化

企業やブランドの本質を理解した社外への広告やPRができるようになる他、社員の言動がブランドの“生きた広告”として機能するため、広告やPRで発信したイメージがリアルの現場でも、“本物”と感じる体験として一貫して伝わるようになり、社外ブランディングの“説得力”や“効果”が何倍にも高まります。

これらの施策・取り組みによって、社員自身が本質的に理解し、その考え方や行動に落とし込むことができるため、企業やブランドの本質的な体質改善や、イノベーションの促進、社外ブランディングの効果を最大化する、などのさまざまな効果を期待できます。

2. アウターブランディングとの違い

インナーブランディングは「社内(社員)に向けて行うブランディング」、一方でアウターブランディングは「顧客や社会など社外に向けて行うブランディング」という違いがあります。

 

多くの場合、ブランディングというと商品やサービス、企業イメージを世の中に発信し、認知度を高めるアウターブランディングを指すことが一般的です。アウターブランディングの主な目的は、市場における自社の存在感を強め、顧客との良好な関係を築くことにあります。

 

一方で、インナーブランディングは企業内部に焦点を当て、企業が掲げる理念や価値観、将来像を社員に共有し、社員がそれらに共感して自発的に行動できるように導く取り組みです。社員が日々の業務を企業の方向性と一致させて実践できるようになることで、組織全体の統一感や士気の向上、人材の定着など、企業活動の土台が強化されます。

インナーとアウターは表裏一体

ただし、インナーブランディングとアウターブランディングは、単に「社内」と「社外」という違いだけで完全に切り離せるものではありません。インナーブランディングによって社員がブランド理念を深く理解し、体現することで、社外に向けた発信やサービスの品質、顧客体験にも大きな影響を与えます。つまり、インナーブランディングの成果がアウターブランディングの信頼性や説得力、さらにはブランド価値の向上に直結するのです。

 

このように、社内への浸透を重視するインナーブランディングと、社外への発信を重視するアウターブランディングは、それぞれの役割や対象は異なりますが、両者は相互に連動し、補完し合う関係にあることを理解しておく必要があります。切り離して考えるのではなく、インナーとアウターが一体となることで、初めてブランドが持つ本来の価値や力を最大限に発揮できるのです。

3. インナーブランディングが必要とされている背景

変化の激しい時代において、「企業が人を選ぶ」のではなく「人が企業を選ぶ」時代において、インナーブランディングの重要性はますます高まっており、企業やブランドは社員との関係性を見直すことが重要となってきました。ここでは、求められている背景と重要性を解説します。

背景1:多様化する働き方・価値観に対応する企業姿勢が求められている

近年は生産年齢人口の減少に加え、副業やテレワークなど働き方が多様化し、個人が自らキャリアを築く時代へと移行しています。特に若年層では、金銭的報酬や役職よりも「自分らしさ」や「社会的意義」を重視する傾向が強まっており、企業には、待遇や制度だけでなく、自社の存在意義やビジョンを明確に示すことが求められています。

 

そのため、社員が企業のパーパスと自身の価値観を重ね合わせ、共感することで、自発的な行動や高いエンゲージメントが生まれ、結果としてブランド価値や生産性の向上につながります。

背景2:変化の激しい時代に対応する企業文化が求められている

現代は変化の激しい「VUCA時代」と呼ばれ、過去の成功体験やマニュアル通りの対応では通用しづらくなっています。テクノロジーや価値観の変化が加速する中で、企業には社員一人ひとりが主体的に考え行動する文化が求められていますが、個々の判断だけに任せると組織としての一体感が損なわれるため、ビジョンやバリューなど共通の価値観を土台にすることが重要です。

 

経済産業省の「人的資本経営の実現に向けた検討会」でも、従業員エンゲージメントや企業文化は人材戦略の中核とされています。インナーブランディングによって価値観を共有し、変化に強い企業文化を育むことが求められています。

背景3:顧客体験の基盤としてインナーブランディングが求められている

ブランドイメージは広告などの発信だけでなく、実際の顧客体験によって形成されます。その体験の中心にあるのが、従業員一人ひとりの対応や行動です。たとえ魅力的な広告を展開していても、現場対応が不十分であればブランド価値は損なわれてしまいます。そのため、まず社員にブランドの理念を浸透させる「インナーファースト」の姿勢が重要です。

 

たとえば高級ホテルでも、スタッフの対応が悪ければ「高級感」という価値は崩れます。また、顧客と接しない部門でも理念やミッションが行動に反映されていなければ、発信と実態にズレが生じ、顧客の失望につながりかねません。理念が自然と社員の行動に現れる状態をつくるには、インナーブランディングが欠かせません。

4. インナーブランディングの代表的な施策例“9選”

インナーブランディングを実践する上では、社員一人ひとりの共感や主体性を引き出し、組織全体の一体感や理念の浸透につなげていくことが重要です。そのためには「情報を伝えるだけ」「一方的に施策を押し付ける」だけでは不十分で、社員の参加や対話、日常業務への定着を意識した多角的な取り組みが、組織の本質的な変化を生み出します。

 

ここでは、よく活用されている代表的な施策を紹介します。

施策例1:社内イベント

運動会や社員旅行、全社集会などを開催し、部署を越えた社員同士の交流の場をつくる施策です。普段の業務を離れたコミュニケーションを通じて、信頼関係や一体感を育みやすくなります。企業理念や価値観を、会話や協力の中で自然に感じてもらうきっかけにもなります。

施策例2:社内報

経営陣のメッセージや事業の近況、社員のインタビューやライフイベントの紹介などを掲載する社内向けメディアです。紙やWEBで発行し、経営層と現場社員の双方向コミュニケーションを促進。組織内の価値観共有や相互理解の強化に役立ちます。

施策例3:社内SNS・ブログ

社内限定のSNSやブログで、業務情報や社員同士のプライベートな話題を気軽に発信・共有できます。コメント機能を通じて自然なコミュニケーションが生まれ、拠点や部署を超えた一体感づくりにも有効です。

施策例4:サンクスカード制度

社員同士が感謝の気持ちをカードで伝え合う仕組みです。日頃のちょっとした貢献や助け合いを認め合うことで、温かい社風と働きやすさを促進します。理念に紐づけて運用すれば、ブランド浸透にもつながります。

施策例5:トップメッセージの発信

社長や経営陣が自らの想いや企業理念を、動画や対面で直接社員に語りかける施策です。経営トップの本音やビジョンを社員が受け止めやすくなり、組織の方向性が揃いやすくなります。

施策例6:社内向けのブランディング動画

経営者のメッセージやブランドストーリーを動画で伝える手法です。文字や写真だけでは伝えきれない雰囲気や熱量を表現でき、オンライン勤務の社員にも確実に情報を届けられます。制作にノウハウがなければ外部に委託するのも選択肢です。

施策例7:ワークショップやディスカッション

社員がグループで理念やブランドについて語り合う場を設けることで、理解や共感を深めます。他者の意見を知ることで自分ごと化が進み、組織の一体感が増します。

施策例8:社員参加型のブランドプロジェクト

新たなブランドメッセージやキャッチコピーなどを、社員の声を反映してつくるプロジェクトです。自分たちがブランドを創る主体だという意識が高まり、ブランド理念の自発的な浸透につながります。ワークショップを活用してプロジェクトを進めるという手法も、非常に効果的です。

施策例9:行動指針を評価や表彰に反映

理念やブランドに沿った行動を評価や表彰につなげることで、日常業務の中でブランド体現を促します。行動指針が目に見える形で称賛されることで、社員の意識と行動の変化を促します。

6. インナーブランディングの成功事例“10選”

業種、業界に関わらず、さまざまなインナーブランディングの成功事例を紹介します。世の中の会社がどのようにインナーブランディングを実施しているのか、成功事例を通じて具体的なイメージを掴むための参考として活用してください。

事例1:インターネット・ビジネス・フロンティア株式会社【自社事例】

EC支援を20年続けてきたIBFは、節目の年に「BRAND NEW FRONTIER PROJECT」と題した全社的なリブランディングを実施。社名にもある「フロンティア」をキーワードに、「次のフロンティアをみんなで切り拓こう」というメッセージを掲げ、全社員が自分事として理念づくりに関わる仕掛けを設計しました。

 

全5回のワークショップを通じて、IBFの強みや個性をあらゆる角度から掘り下げた結果、共通する価値観として「循環」「幸せ(ハッピー)」が浮かび上がり、それをもとにブランドパーパス「幸せが循環する世界を切り拓く」が誕生。さらに、価値観や行動指針も定義し、ブランドとしての核を明確にしました。

その後、プロジェクト名でもあった「BRAND NEW FRONTIER」は、後にブランドスローガンとしても昇華され、社内外への意思表示として幅広く活用。訴求力のあるメッセージ表現へと発展しました。また、新たなコーポレートロゴでは、「IBF&Partners」「Client」「Consumer」の3者をつなぐ3つの円を配置し、伴走者としての姿勢とフロンティア精神を視覚化。ブランドカラー「IBF RED」には、人間らしい感受性や創造力、行動力を象徴する意味が込められています。

 

リニューアルしたコーポレートサイトでは、企業理念とサービスを有機的に構造化し、IBFの考え方と価値が伝わる設計に。結果として、WEBからの問い合わせは数倍に増加し、社員のエンゲージメント向上にもつながる好事例となりました。

事例2:明和地所株式会社【自社事例】

CLIOマンションの開発・分譲事業をはじめ、不動産売買・賃貸仲介、リノベーション事業、ウェルスソリューション事業、不動産管理事業など、多岐にわたる不動産事業を展開する明和地所グループは、創業30周年を機に、社内外の価値観を見つめ直すリブランディングに着手。従来のトップダウン型組織から脱却し、社員の声を反映したボトムアップ型のブランド構築を目指して、部門・年齢を越えた15名による全8回のワークショップを開催。自由な対話を通じて、会社としての「あるべき姿」と向き合うプロセスを重ねました。

 

そのなかで生まれた意見やキーワードをもとに、「想いをかなえ、時をかなでる。」というブランドステートメントを軸に企業理念を再定義。この言葉には、住まいを通じて信頼と共感を育み、人々の人生に寄り添い続けるという企業の決意が込められています。

さらに、6年後の2020年には、新たに加わった社員にも理念を伝えるため「アクションポリシー」を策定。理念の体現を促すために、日常的に目に触れるポスターやカード、シールなどの浸透ツールも開発しました。企業理念と行動指針が連動することで、社員からは「理念がより理解しやすくなり、自分の行動に落とし込みやすくなった」との声も上がっています。

 

こうした一連の取り組みを通じて、社員の自発的な行動が促され、組織内のシナジー強化につながっただけでなく、供給戸数の増加や事業拡大といった具体的な成果にも結びついており、ブランド変革が企業成長の原動力となった好例といえるでしょう。

事例3:本多通信工業株式会社

労働組合結成50周年を機に、本多通信工業は全国の社員とその家族が参加するクルージングイベントを実施。東京湾の景観を楽しむ船上パーティーに加え、遠方からの参加者には浅草観光も提供。家族を交えた社内イベントにすることで、社員同士だけでなく家族間の交流も促進し、自然なコミュニケーションの活性化が図られました。

 

イベント実施の背景には、社長と社員の対話集会で寄せられた「社内のつながりを深めたい」という声があり、会社と組合が協力して開催に至りました。家族からも「いい会社だね」という声が多く寄せられ、参加者間の会話も増加。集合写真の撮影を通じて全体の一体感も醸成されたといいます。

事例4:SBテクノロジー

創業20周年を機にSBテクノロジーでは、「SBTらしさとは何か?」を全社員で考える全社プロジェクト「Vision 2030」を始動。キックオフイベントでは、2030年の社会や自社のあり方についてともに思考する場が設けられ、130チームが未来のSBT像を描くワークショップを実施。多様な価値観を共有し、社員一人ひとりが主体的に関わる仕組みを構築しました。

 

その後、経営幹部が社員の想いを読み込み、議論を重ねた末に新たなビジョンとバリューが誕生。トップダウンではなく、全社で創り上げた価値観が共有されることで、未来に向けた一体感を醸成しました。

事例5:豊通マテリアル株式会社

豊田通商の非鉄金属部門から独立した豊通マテリアルは、急成長を遂げるなかで「自分たちが大事にしたいことを、自分たちで考えたい」という思いから、新たな経営ビジョンの策定に着手。社員が主体となるプロジェクト体制を組み、部門横断での対話や議論を重ねたことで、立場や価値観の違いを超えて「TMI VISION 2025」が形に。コーポレートプロミス「マテリアルをつなぎ めぐる社会をつくる」には、各メンバーの想いが込められています。

 

議論を通じて社員の意識も変化し、共通言語の誕生が組織の一体感を生み出した成功事例といえるでしょう。

事例6:小野薬品工業

小野薬品工業は、社員の挑戦を後押しするため、イノベーション人財育成の一環としてビジネスコンテスト「HOPE」を開始。外部パートナーの伴走支援を得て、83件の応募から3件の事業化検討テーマが生まれました。

 

成功の背景には、社員の不安を解消するトップのメッセージ発信や、熱意を重視した審査基準、リアルな相談会や学習支援による意識醸成があります。また、社内文化を熟知したメンバーが事務局に加わることで、より社員に寄り添った運営が可能となりました。情熱を持って挑んだ社員の姿は全社に共有され、次世代の挑戦を促す土壌づくりにもつながっています。

事例7:第一三共株式会社

第一三共は、革新的な医薬品創出を支える企業文化の浸透に向けて、全世界で「One DS Culture」の醸成を推進。2020年のカルチャーサーベイを起点に、リーダー層のワークショップやストーリーテリング動画の展開、理念カードや解説ブックなどのツール制作を通じて、価値観の共有を図ってきました。

 

各国のメンバーとのオンライン協働や初代社長に関する映像制作など、グローバルでの文化浸透に伴走した揚羽との協業は、同社にとって新たな一歩となりました。社員の行動変容と企業成長を見据えた支援が、今も続いています。

事例8:ぺんてる

ぺんてるは、社員の創造力を引き出す社内イベント「PENTEL RAKUGAKI WEEK」をきっかけに、社内の盛り上がりを社外にも発信すべくコンテンツ化を検討。内輪感を排し、初見でも楽しめるゲーム型キャンペーンページとしてクラシノと共に企画を再構築しました。

 

結果、多くの共感を呼び、Web業界誌にも取り上げられるなど、対外的なブランディングにも寄与。共創型の進行により、想像を超える体験価値が生まれ、今では社内でも継続を望む声が上がるなど、強い反響を得ています。

事例9:株式会社アイワード

株式会社アイワードでは、1983年より全社員が日報を記し、それを全社員に共有する社内報「フォーラム」を発行。36年間にわたって継続され、2019年には通算5550号を達成しました。

 

この取り組みは単なる情報共有にとどまらず、社員同士の相互理解や理念・ビジョンの浸透に貢献しています。社員起点の仕事改革や新事業創出にもつながる実践として、国内外の先進事例と並び高く評価されており、働きがいを高める経営改革の一環として社内外に広く紹介されています。

事例10:アッヴィ合同会社

アッヴィ合同会社では、社員エンゲージメント向上と組織の成長を目的に、新たな5カ年計画「Road to the Best」を始動。発表の場として実施した全社総会「All Employee Meeting」では、コロナ禍に対応し初のオンライン開催を行い、双方向のコミュニケーションやライブ配信など工夫を凝らしました。

 

さらに、特設サイトの開設や「Road to the Best Week」の開催など、継続的な理解促進と自発的な参加を促す取り組みを展開。社員の自分ゴト化を重視しながら、全社でビジョンの実現を目指す姿勢が、企業文化として定着しつつあります。

6. インナーブランディングを成功に導くポイントや注意点

インナーブランディングを効果的に進めるためには、押さえておきたいポイントと、見落としがちな注意点があります。さまざまなプラスの効果が期待できる一方で、やり方を間違えると、社員のモチベーション低下や組織の分断、理念の形骸化など、かえって逆効果を生んでしまうリスクもありますので、現場で実践するうえで意識したい重要な視点を整理します。

ポイント1:MVVを言語化し、組織の指針を明確にする

まず最初に取り組むべきは、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の明確化です。MVVが曖昧なままでは社員の意識統一が難しく、どんな施策も本来の効果を発揮できません。MVVは、企業が目指す方向性や価値観を共有するための基盤となるものです。社員一人ひとりが「なぜこの取り組みを行うのか」「自分たちはどこに向かっているのか」を常に確認できる“立ち戻る場所”として機能します。

 

経営層が中心となってMVVをしっかり言語化し、全社で共有・浸透させることが最初の一歩です。

ポイント2:従業員を巻き込み、共感を生む伝え方を意識する

インナーブランディングは、企業理念や価値観を一方的に押し付けるのではなく、従業員自身が自然と共感し、自分ごと化できる工夫が重要です。施策設計の段階から従業員を巻き込み、「これを守れ」ではなく「共に目指そう」という姿勢を大切にしましょう。

 

また、自社の歴史や実績、目指す未来を一貫したストーリーとして伝えることで、理念や価値観の浸透が進みやすくなります。ただし、トップダウンで進めすぎると、「やらされ感」や反発、形骸化を招くリスクがあることも意識が必要です。

ポイント3:長期的な視点で継続的に取り組む

インナーブランディングは一朝一夕で成果が出るものではありません。理念や価値観の浸透には、長期的な視点で継続的に計画・実行していくことが大切です。

 

実際に多くの企業が年単位で取り組んでおり、継続的な発信や仕組み作り、研修などに相応の時間とコストがかかります。短期的な効果を焦らず、地道な取り組みを積み重ねる姿勢が、着実な組織文化の醸成へとつながります。

ポイント4:自社に適した手法を選び、視覚的に伝える

インナーブランディングの施策は、社内報や社内SNS、動画制作など多岐にわたります。大切なのは、自社の目的や伝えたい内容に最も適した手法を選ぶこと。特に、ビジュアルを活用することで、社員の理解や共感をより得やすくなります。

 

一方で、強い一体感を求めすぎると個性や異なる価値観が排除されるなど、多様性を損なうリスクもあるため注意が必要です。また、理念やブランドと現場の実態や評価制度にギャップがある場合、不信感や混乱につながる恐れもあります。

 

こうした課題にも十分配慮しながら、自社の実情や組織文化に合った、無理のないアプローチを選ぶことがインナーブランディング成功のカギとなります。

ポイント5:外部の客観的視点を取り入れる

社内だけでインナーブランディングを進めると、どうしても内向きの発想や“思い込み”に陥りやすい傾向があります。こうしたときに有効なのが、外部のブランディング会社やコンサルタントなど第三者の客観的な視点を取り入れることです。

 

外部パートナーは、社内では気づきにくい課題や強みを見抜き、専門的な知見や最新事例を基にしたアドバイスを提供してくれます。また、従業員が安心して本音を話せる第三者としての役割や、プロジェクトを客観的に進める推進力にもなります。

 

社内外のバランスを保ちつつ、時に外部の力を借りることで、インナーブランディングがより確実に、そして効果的に進められます。

7. インナーブランディングの進め方

実際にインナーブランディング施策を進める際は、段階的かつ長期的なアプローチが欠かせません。ここでは、具体的なステップとその進め方を紹介します。

ステップ1:自社らしいブランドを策定し、伝える軸を定める

インナーブランディングを進めるうえで最初にすべきは、「何を伝えるのか」を明確にすることです。ビジョン・ミッション・バリュー・パーパス・プロミスなど、自社独自のブランドを定義し、社員と共有できる言葉に落とし込む必要があります。近年は、トップダウン型ではなく従業員参画型で策定する動きが広がっています。ワークショップやアンケートを通じて社員の声を反映させることで、納得感と共感を得られやすくなります。策定プロセス自体が自社らしさの再確認となり、後の浸透フェーズにも効果的です。

 

自由な意見交換を促すには、ファシリテーターの存在や外部クリエイターの協力も有効です。意見を整理し、共感されるブランドづくりへ導きましょう。

ステップ2:社員がブランドに共感できる機会を継続的に設ける

策定したブランドを浸透させるには、社員が理解・共感できる機会の創出が不可欠です。ブランド発表イベントでは、経営層による説明だけでなく、プロジェクトメンバーが自分の言葉でプロセスや想いを語ることが効果的です。また、共有されたブランドについて社員同士で感じたことや行動の変化を語り合うワークショップも有効です。他者の視点を通じて理解が深まり、多様な解釈を受け入れる土壌が育まれます。

 

ブランドムービーや社外の声を取り入れた映像の活用も、抽象的な概念を具体化する手段として有効です。さらに、社内報やSNS、ブランドブックなどを活用し、継続的に発信・研修を行うことで、ブランド定着を図りましょう。

ステップ3:ブランド体現を促す企業文化をつくる

インナーブランディングの目的は、社員がブランドを理解するだけでなく、それを行動で体現することにあります。せっかく策定したブランドも、言葉だけが変わって実態がともなわなければ、社員の失望を招きかねません。行動変容を促すには、企業文化の見直しが不可欠です。従来の成果主義が根付いた職場で「新しい価値の創造」を掲げても、上司の一言で挑戦が萎縮してしまうこともあります。逆に、上司や管理職の後押しや評価制度での明確な承認があれば、社員の行動は加速します。

 

ブランドを根付かせるには、社員の行動に影響する文化そのものを捉え直し、必要に応じてアップデートしていくことが重要です。

ステップ4:ブランド体現行動を可視化・称賛し、浸透を図る

ブランド体現行動を社内に浸透させるには、行動を可視化し、称賛する仕組みが重要です。特に効果的なのが「ブランドアワード」です。単なる表彰式ではなく、エントリーから表彰までのプロセス全体でブランドの意味を具体化できます。アワードでは、成果だけでなく葛藤や判断の背景を共有することで、行動に込められた想いや姿勢を伝えられます。これにより、他の従業員が「自分もやってみたい」と共感しやすくなります。

 

イベント後に社内報や特集冊子で紹介を続けると、浸透が深まります。また、業績には金銭的報酬、ブランド体現には全社での称賛という形で評価を分けることで、双方の価値を明確に伝えられます。

ステップ5:アンケートを用いて効果測定する

インナーブランディングの効果測定には、アンケートを活用する方法があります。企業理念が社内に浸透しているかを把握するためには、以下の観点で設問を設定するとよいでしょう。

 

「企業理念を覚えているか」「企業理念を理解しているか」「企業理念を実行できているか」など、段階的な認識や行動の有無を確認する設問が有効です。

ステップ6:KPIを設定し、効果の定量的な振り返りを行う

インナーブランディングの効果を測定するには、定量的に評価できるKPI(重要業績評価指標)の設定が重要です。KPIを設けることで、社員が企業の目指す方向を理解し、それに沿って行動しやすくなります。

 

KPIは、企業のビジョンや価値観と直結する指標を選びましょう。たとえば「従業員満足度」や「イベントの参加率」などが挙げられます。設定後は定期的にKPIの達成度を確認し、その指標が適切かどうかを振り返ることも重要です。

8. インナーブランディングに関するよくある質問・FAQ

インナーブランディングについて、よく質問いただく疑問や誤解などを、Q&A形式でまとめました。インナーブランディングの実施を検討する際の参考にしてください。

Q. インナーブランディングの施策の例は?

A. 代表的なインナーブランディング施策には、ブランド策定プロジェクトがあります。その他にも、策定したブランドを共有するワークショップや社内イベント、社内報、社内SNS、ブランド映像、クレドなどがあります。

Q. インナーブランディングの失敗例はある?

A. よくある失敗例としては以下のようなものがあります。

  • マニュアル通りで自社に合わなかった
  • MVVが整理されていなかった
  • 上からの一方的な価値観の押し付けになった
  • 成果を急ぎすぎて定着前に終了した

 

これらは、ブランドの方向性が曖昧だったり、現場の実情を無視したことが原因であることが多いため、成功のためには、現場の声を反映し、時間をかけて丁寧に進めることが重要です。

Q. 企業のインナーブランディングとは?

A. インナーブランディングとは、企業が自社の理念や価値観を社員と共有し、組織としてのまとまりや働く意欲を高める取り組みです。たとえばスターバックスでは、「サードプレイス(第三の居場所)」という考え方を社員に浸透させることで、仕事のしやすさや企業への愛着を育んでいます。こうした姿勢が、結果的にサービスの質や顧客満足度の向上にもつながっているといえるでしょう。

Q. インナーブランディングの注意点は?

A. よくある注意点としては以下のようなものがあります。

  • 成果まで時間がかかる:施策が浸透するには時間が必要で、早めに取り組むことが大切です。
  • 全員が賛同するとは限らない:強引な施策には反発もあり得るため、無理に進めず理解を促す姿勢が大切です。
  • コストがかかる:画像や動画などの活用には、制作・管理の手間や専任人員の確保といったコストが発生します。

Q. インナーブランディングの目的と効果は?

A. インナーブランディングの目的は、企業理念や価値観を社内で共有し、社員が正しく理解し行動できる状態をつくることです。価値観や考え方を組織全体でそろえ、同じ方向を目指すために欠かせない取り組みであり、ロゴやスローガンの共有にとどまらず、「何を大切にし、社会にどんな価値を提供しているか」を社内外に伝える重要な施策です。

 

社員が本質的に理解し行動に落とし込むことで、企業体質の改善、イノベーションの促進、社外ブランディング効果の最大化などが期待できます。

さいごに:インナーブランディングを通じて、企業文化を次のステージへ

インナーブランディングは、単に理念を共有するだけでなく、社員一人ひとりがその価値観を日々の行動に落とし込むための継続的な取り組みです。働き方や価値観が多様化するなかで、企業と社員が同じ方向を向いて進んでいくには、共感を軸とした組織文化の醸成がこれまで以上に求められています。本記事では、インナーブランディングの重要性から、具体的なメリットや進め方までを紹介してきました。大切なのは、形式だけにとらわれず、自社に合ったかたちで取り組むこと。そして、社内外に一貫したブランド体験を生み出していくことです。

 

エフインクでは、企業理念の策定から、組織文化の浸透支援、ブランド体現行動の設計・可視化まで、インナーブランディングの全体を一貫してサポートしています。多様な業種・規模の支援実績をもとに、それぞれの企業らしさを引き出し、持続的に成長するための土台づくりをご一緒します。

 

「自社の想いや価値観を、組織全体にしっかり根づかせたい」とお考えの方は、ぜひ株式会社エフインクまでご相談ください。

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