CLIO/明和地所

ブランディングで育まれた当事者意識。“自分ごと化”で変化を実感。

「CLIO(クリオ)」ブランドのマンションを手掛ける「明和地所株式会社」。5年振りに行ったリブランディングにより、アクションポリシーを策定。理念を広く社内に浸透させ、社員の意識や行動を変える良いきっかけになったと言います。意識変革を可能にし、継続的に推進するブランディングの大切さとは。

取材先プロフィール

明和地所株式会社

首都圏を中心に、名古屋、福岡、札幌で「CLIO(クリオ)」ブランドのマンションを販売。1986年の創業以来、供給したマンションは950棟・4万6000戸超(2022年3月31日現在)を数える。現在はその豊富な知見を生かし、グループ会社と一体になって、不動産仲介、マンションの総合管理、リフォームやリノベーションまでをワンストップで提供。また、2015年には社員参加型のブランディングで企業理念の策定を行い、ブランドシンボルも一新した。「想いをかなえ、時をかなでる。」をステートメントに掲げ、今日も価値ある住まいを作り続ける。

竹馬智沙乃さん

社長室 ブランド戦略担当 係長 。ブランド戦略を担当して6年。2020年のリブランディングにおいては、ブランディング事務局としてワークショップの運営などに尽力。

前回のブランディングから6年経ち想うこと

企業理念の構築には、非常に多くの時間と手間が掛かります。だからこそ陥りがちなのが、理念だけ作って満足してしまうこと。むしろ作ってからが本当のスタートで、それを社内に周知・浸透させ、社員ひとり一人が具体的なアクションを起こせるようになることが理想。そのためには一貫性を持ち、理念の浸透のため、ブランディングを継続していくことが大切なのです。

首都圏を中心に「CLIO(クリオ)」ブランドのマンションを販売する明和地所株式会社は、2015年に行った大規模なブランディングの際に、そのことをよく理解していました。

「現在掲げている『想いをかなえ、時をかなでる。』というステートメントや、グループシンボル、ブランドロゴはその時に作成したものです。さまざまな部署の社員が集って一緒にワークショップを行い、議論を重ねながら完成させました」

それにより、会社の雰囲気は大きく変わったと言います。社内に浸透するまでに時間は掛かりましたが、結果として多くの社員が受け身ではなく、能動的に動くようになりました。

「それから約6年経ち、当時ブランディングに関わっていた従業員たちは他の社員を牽引する存在になっています。そこで、新しく入った社員たちにも理念やステートメントの理解を促し、広めていくため、2020年にアクションポリシーを作成することにしたのです」

ワークショップでブランディングを“自分ごと”に

アクションポリシー、つまり行動指針とは、経営理念やミッションを実現していくために、どう行動すべきかを示したもの。その内容を決めるのは、今回も社員たちです。多くの人の意見を取り入れるため、ワークショップを複数回行い、ひとつにまとめた案を経営陣に答申するボトムアップ形式をとりました。

ここで重要なのが、たくさんいる従業員の中から、どんなメンバーを選抜するかということ。そして何より、良いアクションポリシーを生み出し、社内に広く浸透させるため、参加者がブランディングを“自分ごと化”できる仕掛けが必要です。そのために、竹馬さんは2つのことにこだわりました。

「まず、なるべく社内で接点のない人たちを集めること。弊社は部署や支店がいくつかありますが、通常業務ではほとんど決まった人たちとしか顔を合わせません。気心の知れた仲よりも、初対面同士の方が面白いことが起こるのでは、と考えました」

そして、もうひとつが社歴です。

「今回は、入社8〜10年の方に参加をお願いしました。この年次の社員を分かりやすく言えば、“5年前のワークショップは経験していないけれど、ブランディングによって会社が変わったことを実感してきた層”です。また業務においてもメンバーからリーダーへ自身の役割が変化していく段階でもあります。会社の変化を身をもって知っているからこそ、今度は自分たちが良い変化をもたらすんだという意識で、前向きに臨んでもらうのが狙いです」

結果として竹馬さんの采配は大成功。“自分たちの会社がもっと良くなっていくために何をするべきか”を若い世代も一緒になって考えることができました。ワークショップは全6回のプログラムで、なかでも明和地所グループの強みと弱み、ステークホルダーの洗い出し、といったテーマでのディスカッションは、大いに刺激になりました。

「特に、自分以外の人が会社についてどう思っているのか、どんなステークホルダーを意識しているのかを知ることは、とても新鮮だったようです。部署によって見え方が違う景色を共有することで“自分ごと”の視野が広がり、どんどんアイデアが出るようになりました。最初の第2回までに行ったこのディスカッションによって、“これがブランディングなんだ”という意識が全体に芽生えたように思います」

アクションポリシーは、行動に直結する合言葉

今回のリブランディングでは、「目指すべき姿」と「そのための行動」をより具体的に定め、ひとつのアクションポリシーとして作り上げました。大きく掲げるスローガンは、「40 years NEW!」です。

5年後に40周年を迎える明和地所が今後どうなっていくのか。それを予想するワークショップの中で多かったのが、新しい明和地所に対するポジティブな期待です。この2年間はコロナ禍もあり、世の中には未だ閉塞感が漂っていますが、そんな中でも社員たちは新しいことにチャレンジしていこうと積極的。その前向きな姿が印象的だったと言います。

これまで積み重ねてきた伝統を守りながら、いかに社会の変化に対応し、「新しい私たち」になることができるか。OLDではなくNEW!であるところには、そんな想いが込められています。

そして、その「目指すべき姿」に近づくためのより明確な行動指針が「5 ACTIONS」です。ワークショップ内で拾い上げた社員たちの言葉をベースに、5つの項目にまとめました。「こだわったのは、彼らの言葉を、なるべくそのまま反映すること。それによって行動に直結できる分かりやすい指針になったと思います。社内でもとても評判がいいんですよ」

これが上層部の意向で決められたトップダウン型のアクションポリシーであれば、また違った形になっていたことでしょう。社員自らが考えて辿り着いた言葉だからこそ共感を生み、実践したくなるアクションポリシーが生まれたのです。

5年前に作成した企業理念『想いをかなえ、時をかなでる。』に加えて、今回のアクションポリシーが決まったことで、社員からは「企業理念への理解が深まり、行動しやすくなった」との声が寄せられています。

継続したブランディングが企業と人の思いを繋ぐ

2015年、そして今回の2020年と2度に分けて進めてきた明和地所グループのブランディング。参加者の力を結集し、優れた成果物が出来上がりましたが、先述したように、社内に広く浸透しなければ成功とは言えません。そこで竹馬さんは、ワークショップのメンバーに浸透フェーズでも役割を担ってもらったそうです。

「ワークショップで気付いたことや学んだことをそれぞれの部署に持ち帰り、他の社員に広める役割をお願いしました。例えば、朝には部署毎に全体朝礼がありますので、そういう場所で話してもらえると、1度に10人くらいの人に広めることができます」

その貴重な機会を確実に伝わるものにしているのが、社内のいたるところに仕掛けた浸透ツールです。例えば、エレベーターホールの壁には大きなラッピングを施しました。各部署のフロアにも掲示し、毎日社員の目に付くように工夫しました。さらに、常に携帯できるカードや、身の回りのものに貼れるシールを準備しました。

「5 ACTIONSのシールは、ひとつひとつが剥がれるようになっていて、NEW!の部分は自分で手書きできるように工夫しました。これが思っていた以上に好評でした。お気に入りのアクションをパソコンや手帳に貼ってくれる方も多くて、そういうのを見ると、やって良かったなと実感します」

また、社内向けの独自サイト「MEIWA ACTION POLICY」を立ち上げました。名前の通り、アクションポリシーにまつわる事柄を発信するサイトで、中には役員と社員の対談記事など、企画から作り込んだコンテンツも。ブランディングを“自分ごと”として捉えている参加者たちも、自発的に協力をしてくれているといいます。

「これらの活動の甲斐あって、本社内ではかなり浸透してきている印象がありますが、支店や仲介店舗など、本社にあまり来ない人たちにどうやって理念を浸透させていくかが今後の課題です」

竹馬さんはそこに、ブランディングを継続していくことの大切さを痛感していると言います。会社が成長し続ける限り人の出入りがあるし、年月が経てば理念の理解度も段々と薄れてしまいます。それを解決できるのがブランディングなのです。

「例えば今回は5年振り2回目のブランディングでしたが、次世代を担う人材が理念を“自分ごと”として捉え、社内にも自発的に浸透させるきっかけになったのはもちろん、これまでの5年間を振り返る良い機会にもなりました。こうしたサイクルを続けていくことが、企業の、そして働く人々の意思を繋いでいくことなのではないでしょうか」

まだ次の5年に向けて歩み始めたばかりですが、その足取りは力強く、道は真っ直ぐに未来へと続いています。

クレジット

  • 石井良
  • 小野真太郎
    写真

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