ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts
2024年01月12日

ブランディングに効果的な「ブランドロゴ」を開発するためのプロセスとポイント

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記事を書いた人

ブランディングディレクター

大規模商業施設やリゾートホテルをはじめ、企業やカフェなど幅広いジャンルの案件に対し多岐にわたりブランディングを推進。『脳みそから血が出るくらい考えているか』を常に自分に問いただしながら、クライアントさえ気づけていないブランドの進むべき道や可能性、デザイン表現をご提案できるよう日々挑戦中。

1. ブランドロゴとは?

会社や商品・サービスなど、あらゆるブランドのブランディングにおいて最も大事な要素の一つであり、印象やコミュニケーションを大きく左右する「ロゴ」。ブランディングがもはや当たり前のように浸透している現在、ビジネスにおいて『優れたロゴによって成長を加速させたい!』『ロゴが必要だと思うがどうしたらいいかわからない』などとお考えの方も多いのではないでしょうか?

 

そもそもロゴの始まりは、牛飼が自分の育てた牛と他の牛とを区別するために牛に押した焼印だと言われています。簡単に言えば、他と違うことを認識させるための「目印」であり「象徴」です。「目印・象徴」として他ではなく自社や商品などを選んでもらうために使用するのですが、周りを見渡すと企業やサービス、商品、タイトル、品質保証など、ありとあらゆる場面で当たり前のようにロゴが活躍しているため、ロゴを用意するだけでは不十分で「質の高いロゴ」の重要性が増しているのが現状です。

 

そこで今回は『質の高いロゴとは?』について、細かなテクニックなどではなく、大きな視点で重要なポイントについて、数多くのブランドロゴを担当してきたエフインクのデザイナーがお応えします。

上記リンク先にて、エフインクがこれまでに手がけたプロジェクトの中からピックアップしたブランドロゴ約100点を、カテゴリー別にご紹介しております。ぜひ合わせてご覧ください。

2. ブランドロゴについて

目的や使用方法、デザインなどにより一概には言えない部分もありますが、基本的な情報としてロゴの種類についてお伝えします。

 

時代と共に多様化し、細分化され、様々な種類のロゴが存在しますが、大きくわけると「シンボルマーク(図形などでデザインしたもの)」と「ロゴタイプ(文字をデザインしたもの)」の2種類に分けられます。どちらも単独でも使用しますが、シンボルマークがある場合、ロゴタイプとの組み合わせで使用されることがほとんどです。

ロゴタイプの特徴

文字要素が中心なので、名称(社名や商品名など)を覚えてもらいやすいというのが最も大きな特徴で、「名称をブランド化したい」場合に用います。

 

また、文字以外の構成要素が少ないため、製品やポスター、パッケージなど様々な展開物に使用する際も良い意味で影響が少なく、展開物のデザイン自由度を上げることができます。その反面、構成要素が少ないためロゴ自体にデザイン的な個性や想いなどの意味を付与しづらい場合もあります。

シンボルマークの特徴

より多くの情報量や意味、想い、世界観などを瞬時に表現できるのが最も大きな特徴で、「シンボルをアイコンとしてブランド化したい」場合に用います。

 

図形を用いて直感的かつダイレクトにコミュニケーションをとることができると共に、言語に関わらず世界中にブランドを訴求することが可能で、アプリアイコンやファビコンなど限られたスペースでの使用にも力を発揮します。その反面、展開する際の運用ルールが増加する場合が多いので、使用する際にはブランドのイメージを損ねないよう注意が必要です。

ブランドが伝えたい想いやイメージなどの情緒的な要素と、使用する場所や大きさ、目的などの機能的な要素、上記にまとめたそれぞれの特徴を踏まえて、どのようなブランドロゴが相応しいかを検討することが重要になります。

3. ブランドカラーについて

「ロゴタイプ」や「シンボルマーク」などの造形に加え、「ブランドカラー」もブランディングにおける「質の高いロゴ」に非常に重要な要素となってきます。

 

人間の目から入る情報のうち、約80% は色彩からの情報だと言われており、色彩が印象に与える影響は非常に大きく、多くのモノを色のイメージで覚えています。実際、何かブランドを思い浮かべた時にブランドのロゴは正しく思い出せないが、だいたいの色はわかる!という形は多いのではないでしょうか?

 

例としてブランド名は伏せた形で、いくつか普段よく目にするブランドのカラーをまとめてみましたので、どのブランドのカラーか当ててみてください!

カラーだけでも、どのブランドかすぐにお分かりになったとは思います。これはそれぞれのブランドが「ブランドカラー」の重要性を理解し、丁寧にカラーを訴求し続けてきたからこその結果です。もちろん、一朝一夕で全てのブランドができることではありませんが、長期的に正しく訴求し続けることで、このようにブランドイメージと直結した確固たるカラーイメージを構築することが可能となります。

ブランドカラーについてはこちらの記事にて詳しくまとめております。ぜひ合わせてご覧ください。

4. 「ロゴの質」は「伝えたい想いの質」に比例する

このように「ロゴタイプ」「シンボルマーク」「ブランドカラー」など重要な要素があることはお伝えいたしましたが、「質の高いロゴ」とはなんだと思われますか?

 

かっこいい、かわいい、シンプル、目立つ、読みやすい…など様々な要因があり、正直、一概に定義することはできませんが、私は「質の高いロゴ」とはブランドが「伝えたい想い」を明確に表現できており、その結果、働く社員や社会・お客さまからブランドが愛される要因の一つになりえるロゴだと考えてます。

 

そして、私の経験や他社の成功事例を踏まえた上で確実に言えることは、ブランドが「伝えたい想いの質」が高ければ高いほど「質の高いロゴ」が生まれる可能性が高くなるということです。主に企業であれば企業理念やブランドのストーリー、商品であればコンセプトなどが該当しますが、「伝えたい想いの質」が高い状態の例をいくつかまとめます。

「伝えたい想いの質」が高い状態の例

① 長期的なビジョンや志、使命、社会へ提供したい価値が明確である。

② 歴史や背景、キャラクター性、強み、競合などを把握できている。

③ 想いを伝えたいお客さまや社会を思い描けている。

④ 企業やブランド全体の今後の世界観をイメージできている。

 

 

例のように想いを上手く整理できたとしても、一つのロゴに全ての想いを込めることはできませんが、このように質が高い状態をつくることで、長期的にどの想いを最も優先して伝えるべきか、という取捨選択をするための判断基準や想いを伝えたい対象、ロゴを使用する場所や大きさ・役割など様々な要素が明確になるため、必然的に依頼したデザイナーなどが持ち寄る案の質が向上すると共に、案を選ぶ側にも適切な審美眼が備わった状態となります。その結果、活発な良い議論や発展に繋がり、オリジナリティーある展開や表現のアイデアなどが込められた「質の高いロゴ」に繋がる可能性が格段に向上します。

 

そのため、ブランドロゴを開発する場合、多くは外部のブランディング会社やデザイン会社など外部パートナーに依頼をされると思いますが、しっかりとパートナーに「伝えたい想い」を共有する時間を確保することや、可能であれば想いを整理していく段階からパートナーに参加していただくことをオススメします。実際、われわれも開発をサポートさせていただく際は、手を動かしてデザインする時間よりも共有や想いを整理することに最も時間をかけることがほとんどです。

5.ブランドロゴの制作事例 -ROKU KYOTO-

実際に「伝えたい想いの質」が高い状態でロゴを開発した事例として“ROKU KYOTO”のブランドロゴをご紹介します。

 

“ROKU KYOTO”は、ラグジュアリーコレクションブランド「LXR ホテルズ&リゾーツ」のアジア太平洋地域で初進出として京都・洛北に2021年オープン。我々はブランドの名称やコンセプトが大筋決まった段階でブランドロゴの開発をサポートしております。

ラグジュアリーホテルならではのラグジュアリー感やコンセプトの表現はもちろん、LXR ホテルズ&リゾーツの特徴である 『その土地、歴史、文化に根ざし、至高のサービスを提供すること』そして『お客様一人ひとりに合わせた、贅沢でありながらもその土地ならではの体験とサービスを提供すること』をいかにブランドロゴで表現するかが課題でした。

名称の由来

ロケーションは400年以上前に本阿弥光悦が芸術村を築き上げ、才能ある芸術家を世に輩出してきた琳派発祥の地であり、「鷹ヶ峰・鷲ヶ峰・天ヶ峰」の三座を総称した「鷹峯三山」の麓、敷地内には一級河川「天神川」が流れ、天神川は紙屋川とも呼ばれ、平安時代に川のほとりで紙を漉いた紙座があったことに由来しています。紙を漉く「漉(ろく)」という言葉と、鷹峯三山の「麓(ふもと・ろく)」を掛け合わせ「ROKU」と名付けられ、訪れたお客様にこの特別な空間を味わってもらいたいという想いが込められています。

ブランドコンセプト

型にはまらない独自の美学を築き上げてきたこの場所のストーリーや歴史・文化など、滞在を通じてまだ知られていない京都の奥深い魅力に浸っていただけるような「知る人ぞ知る京都へ深く潜り、特別な感覚を呼び覚ます」リゾートホテルをめざし掲げられたコンセプトは“Dive into Kyoto”です。

長い年月をかけてまとめられた名称やブランドコンセプトなど様々な要素は、「伝えたい想いの質」が非常に高い状態で、どのような体験ができるのかが明確に想像できる素晴らしいものでした。

 

これらを踏まえた上で現地視察やヒアリングを重ねながら、まずはじめにブランドを表現するに相応しいモチーフを、具体的なものから抽象的なものまでさまざまピックアップしていくのですが、想いの質が高いため、無駄なく相応しいモチーフを選定することが可能となります。

ピックアップしたモチーフの一例

ご提案していない案も含めると数百案を制作し、議論を重ねながら相応しい案を絞り込んでいくのですが、クライアントもわれわれも判断基準が明確なため、非常に良い議論やアイデアが飛び交いながらも、非常にスピーディーかつ効率的にブラッシュアップしていくことができ、何度かのブラッシュアップを経て、最終的に満場一致で選ばれたメインモチーフは「台杉」。

 

「台杉」に込められた職人の想いや技術、年月が京都の奥深さを表現するに相応しいことや、「その土地、歴史、文化に根ざす」というLXR ホテルズ&リゾーツの特徴が「木」のモチーフにリンクするための選定で、日本国内の関係者はもちろん、ブランドを管理する海外のご担当者さまなど、日本の文化などにあまり詳しくない方からも即決で『これしかない!』というご回答をいただき、「伝えたい想いの質」が高い状態でロゴを開発してくことの重要性を再確認した制作事例となりました。

“ROKU KYOTO”のブランドロゴに込めた想い

 

シグネチャーツリーであり、太い幹の途中から多数の細い幹が株分かれし、職人が長い年月をかけて作り上げる北山杉の仕立て方のひとつである「台杉」と、施設特徴であるサーマルプールの水面に映る「鷹峯三山」のシルエットをモチーフに、⼀つの幹から空へ力強く伸びていく枝で京都の奥深さと呼び覚まされる好奇心と、江戸時代初期に本阿弥光悦が芸術村を築き、琳派発祥の地ともいわれるこの地ならではの繊細な美意識を表現。

 

具体的なモチーフはありながらも「知る人ぞ知る京都へ深く潜り、特別な感覚を呼び覚ます」を想起させるため、あえて見る方によって様々な捉え方ができる造形としており、ブランドカラーは日本の伝統色から樹木がうっそうと茂る深い森のような色であり、長寿と不変の象徴として四季の移ろいの中でいつも変わらぬ緑の葉をつける松の色でもある「千歳緑(せんざいみどり)」を設定。千年の後も変わらない緑の意を示す縁起の良い色名で、長く多くのお客さまに愛されるホテルとなるよう願いを込めました。

6. ロゴはあくまで重要な要素の一つ

「質の高いロゴ」を生み出すためにもう一つ重要なこと。それはロゴはブランドにとって最も大事な要素であることに変わりないのですが、あくまで要素の一つであり、ブランド全体で「伝えたい想い」を表現するという視点を持つことです。この視点で俯瞰できている場合、オリジナリティーあるアイデアを表現したロゴはもちろん、シンプルなロゴでも「質の高いロゴ」たり得ることがあります。

 

ロゴは、名刺やWEBサイト、広告、CMなど様々な展開物を通じて、初めて社会やお客さまに届きます。スマホやタブレットなどが当たり前になり、様々な媒体を通してブランドが「伝えたい想い」を伝える場所や手段、表現、選択肢が非常に増え、ロゴは多くの場合、写真や動画、グラフィック、タイポグラフィーなどのデザイン要素と共に表示されます。社会環境の変化も早く、ブランドも常に変化や進化を続けなければいけません。

 

このように展開物でブランドの「伝えたい想い」を表現することを優先させる場合、オリジナリティーあるアイデアや表現、カラーなどロゴに含まれる要素が、展開物などとマッチしないことや世界観の表現を妨げる可能性があるため、あえて「シンプルなロゴタイプ」を採用するブランドが増えていおり、「apple」や「GUCCI」などの世界的なブランドを筆頭に多く見られるようになりました。しかし、ロゴの運用ルールや展開負担は少ないですが、「伝えたい想い」を展開物で表現し続けることが必要ですので、緻密なブランド戦略が非常に重要になります。

7. 一貫性を持たせて管理し続ける

ブランドは時間とともに進化し、変化をし続けていきます。そのため、変化に強く進化を止めないブランドづくりが非常に重要です。

 

ブランドには非常に多くの人が関わりますが、ブランドに対しての理解度も様々です。ブランドは非常に脆く、一度の不適切な展開などによってせっかく築き上げてきたイメージが一瞬で崩れてしまう場合もあります。そのため、ブランドデザインマニュアルなどの管理アイテムを軸に、時代などによってアップデートし続けながら、目に見える要素はもちろん、見えない要素も含むすべての要素に一貫性をもたせて、ブランドに関わる誰もが適切に正しく扱えるよう管理し続けていくことが大切です。

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上記リンク先にて、事例の課題や提案内容・成果をはじめ、実際のデザインなどブランディングの詳細をご紹介しております。記事と合わせてぜひご覧下さい。

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