競合が増え、サービスの差別化がますます難しくなるなか、「価値はあるのにうまく伝わらない」「自社サービスの魅力が選ばれる理由につながっていない」と感じる企業は少なくありません。
こうした状況を打破する鍵となるのが「サービスブランディング」です。本記事では、サービスブランディングの効果や成功させるためのポイント、具体的な事例を解説します。
ブランディングをひもとくメディア

大規模商業施設やリゾートホテルをはじめ、企業やカフェなど幅広いジャンルの案件に対し多岐にわたりブランディングを推進。『脳みそから血が出るくらい考えているか』を常に自分に問いただしながら、クライアントさえ気づけていないブランドの進むべき道や可能性、デザイン表現をご提案できるよう日々挑戦中。
競合が増え、サービスの差別化がますます難しくなるなか、「価値はあるのにうまく伝わらない」「自社サービスの魅力が選ばれる理由につながっていない」と感じる企業は少なくありません。
こうした状況を打破する鍵となるのが「サービスブランディング」です。本記事では、サービスブランディングの効果や成功させるためのポイント、具体的な事例を解説します。
1. サービスブランディングとは?目的や効果を解説
2. 商品ブランディングや企業ブランディングとの違い
3. サービスブランディングが必要とされる背景
4. サービスブランディングの効果
5. サービスブランディングにおける「便益」の見極め方
6. サービスブランディングの進め方
7. サービスブランディングで失敗しやすいポイント
8. サービスブランディングの成功事例

サービスブランディングとは、サービスが提供する価値(便益)を、あらゆる接点を通じて「体験として届ける仕組み」をつくることです。
特にサービスは無形で品質が揺らぎやすく、価値が人によって異なって受け取られやすいため、単なる発信だけでは魅力が伝わりません。だからこそ、UX設計・メッセージ・接客・UIなど、あらゆる接点を一貫した体験として整えることが不可欠です。
さらにサービスでは、価値の「ズレ」が起きる場所がある程度決まっています。たとえば、利用前(不安・期待)/利用中(迷い・負担)/利用後(満足・納得) のどこかで、顧客が想定していた便益が得られないと、評価は一気に落ちます。
サービスブランディングは、このズレが起きやすい接点を特定し、どの担当者・どの場面でも同じ便益が体験として再現される状態を設計する取り組みです。

商品ブランディングが「形ある製品の特長」で価値を伝え、企業ブランディングが「理念や姿勢」を軸に信頼を築くのに対し、サービスブランディングは顧客が触れる 体験そのものを価値として設計する点が特徴です。
サービスは利用のたびに価値が更新されるため、プロセス全体がブランド体験になります。
利用者の状況によって受け取り方が変わることを前提に、「どのシーンでどんな成果を生むか」を構造化し、顧客が自分ごととして理解できる形に翻訳することが求められます。

サービスが飽和し、顧客の判断基準が多様化する今、従来の「機能や価格だけでは選ばれない」市場構造が進んでいます。ここでは、サービスブランディングが必要とされる背景を解説します。
サービス産業は急速に拡大し、あらゆる分野で類似サービスが乱立しています。選択肢が増えたことで顧客は違いを見分けにくくなり、「機能」「価格」といった表面的な比較では差がつかない状況が進行しています。
サービスは目に見えず、提供プロセスや対応品質によって価値の感じ方が変わる特徴があります。顧客は「何を買うか」よりも「どんな体験を得られるか」で判断するようになり、利用前後の接点を含む体験全体の設計が価値そのものを左右しています。
サービスが成熟すると価格競争に陥りやすく、収益性や品質維持が困難になります。そこで重要になるのが「価格以外の理由で選ばれる状態」をつくることです。
提供価値が明確で魅力として理解されれば、適正価格で選ばれやすくなり、競合と同列に比較されない独自のポジションを築けます。
顧客は機能や価格だけでなく、使いやすさ、安心感、世界観、サポート品質など、体験全体でブランドを評価するようになっています。これは「モノよりコト」で価値を判断する時代への移行を意味しています。

サービスブランディングに取り組むことでどんな成果が生まれるのか。競争優位、信頼構築、売上向上など、サービス特有の強みへと転換される具体的な効果を紹介します。
サービス市場では機能や価格だけでは差がつきにくく、顧客が違いを理解しにくいという課題があります。サービスブランディングは、提供価値や体験の特徴を明確にし、「なぜこのサービスなのか」を一目で理解できる状態をつくります。
便益が可視化されることで、同じカテゴリに見える競合との差異が際立ち、比較されにくい「指名されるブランド」へとつながります。
サービスは継続的な接点で価値が生まれるため、信頼が関係維持の中心になります。ブランドとして価値観や提供姿勢が一貫して表現されていると、顧客は「期待した体験が得られる」と判断しやすくなります。
信頼が積み重なるほど、顧客は長期利用・再依頼・紹介を自然に行い、企業は短期的な獲得活動に頼らずとも関係を育てられるようになります。
価値がわかりやすく、期待通りの体験が得られるサービスは、自然と継続利用やアップセルが生まれます。また、顧客が「このブランドなら間違いない」と感じられると、新規獲得のハードルも下がり、広告依存の低減にもつながります。
結果として、LTVの最大化や収益性改善が進み、短期的な売上だけでなく長期の事業成長にもつながります

サービスブランディングを進めるうえで、最も重要でありながら曖昧になりやすいのが「このサービスは顧客にどんな便益(Benefit)をもたらしているのか」を正確に捉えることです。
便益とは、機能や特徴そのものではなく、サービスを通じて顧客の状態や気持ち、行動が「どう変化するか」を指します。
たとえば「効率化できる」「管理できる」といった表現は機能説明に近いものです。そのため、便益として捉える場合は、「判断に迷わなくなる」「不安が減る」「任せられる」「本来の仕事に集中できる」など、顧客側に起こる変化に焦点を当てます。
サービスの価値が伝わらない原因は、機能ではなく“変化”が言語化されていないことにあるケースが多いです。
サービスの便益は、利用のタイミングで変化します。利用前は「不安が減る・納得して選べる」、利用中は「迷わず使える・ストレスがない」、利用後は「期待通りだった・次も頼みたい」といった具合です。
この流れを整理しておくと、体験のどこで価値のズレが起きているかを特定しやすくなります。
サービスは機能が似通いやすいため、差別化の中心になりやすいのは「安心感」「信頼感」「誇り」「自信」「ラクに続けられる」といった「情緒的便益」です。
「機能的便益」と「情緒的便益」を両方整理したうえで後者を言語化できると、「なぜこのサービスを選ぶべきなのか」が、より一層伝わりやすくなります。

サービスブランディングは、感覚的に取り組むのではなく、価値の設計から体験づくり、運用・改善までを段階的に進めることで成果が最大化されます。ここでは、サービスブランディングの基本的な進め方を解説します。
最初に「このサービスは、誰に、どんな変化(便益)をもたらすのか」を明確にします。市場や競合の整理に加え、顧客がどの場面で価値を感じ、どこに不安や不満を抱いているのかを把握することで、以降の設計の軸がぶれにくくなります。
認知・検討、導入、利用・運用、継続といった一連の体験を俯瞰し、各接点で「どんな価値を感じてもらうべきか」を設計します。サービスでは価値のズレが起きる場所がある程度決まっているため、便益が途中で途切れない流れをつくることが重要です。
サービスの核となる価値(コアバリュー)や便益、ブランドの約束、提供する体験を一貫性ある形で設計します。「何を言うか(メッセージ)」と「どう届けるか(体験設計)」を分離せず、同じ価値観のもとで統合することが重要です。
設計した価値を、言葉・デザイン・UI・資料・営業トーク・接客などに落とし込みます。サービスは人や運用で品質が揺らぐため、スタッフが価値基準を理解し、自分の判断で体験をつくれる状態を整えることが不可欠です。
施策ごとの効果測定だけでなく、「約束した体験が届けられているか」「期待とのズレはないか」を継続的にチェックします。ブランドを「育成する資産」として捉え、長期視点で改善サイクルを回すことで、選ばれ続ける状態へつながります。

サービスブランディングがうまくいかない原因は、施策不足ではなく「設計のズレ」にあるケースがほとんどです。ここでは、特につまずきやすい落とし穴を整理します。
機能や特徴は語れても、「顧客の状態がどう変化するのか(便益)」が言語化されていないと、価値は伝わりません。便益はコピーで補うものではなく、体験設計・運用設計・コミュニケーション設計すべての起点です。
「安心」「簡単」「寄り添う」といった言葉を掲げても、UIや対応がそれに追いついていなければ、信頼は生まれません。サービスでは言葉より体験が強く評価されるため、メッセージを強めるほど、体験の整備が前提になります。
サービス品質が人によって変わる状態は、ブランド価値を不安定にします。完璧なマニュアルよりも、判断基準(何を優先すべきか)を共有し、「このサービスらしさ」を現場で再現できる状態をつくることが重要です。
Webや広告の表現を整えても、利用体験が変わらなければ、ブランドは定着しません。サービスブランディングはコミュニケーション施策ではなく、体験設計の取り組みであることを忘れてはいけません。
獲得数やCVだけを追い続けると、ブランドは消耗します。継続率、紹介、指名検索、満足度など、「信頼が積み上がっているか」を見ながら改善することで、長期的に選ばれる状態につながります。

サービスブランディングは、価値を「伝わる形」へと変換することで成果を生み出します。ここでは、課題の解決や市場での評価向上につながった具体的な成功事例を紹介します。


インターネット・ビジネス・フロンティアの「DATAD」は、広告の成果改善に必要な「消費者の気持ち」を誰でも直感的に理解できるようにし、意思決定の迷いを減らす便益を提供するサービスです。
広告レポートの数字だけでは見えない「消費者の気持ち」を読み解き、成果改善につなげる新しい広告効果改善します。
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サービスブランディングは、見えにくい価値を「体験」という形で可視化し、選ばれ続ける仕組みへと育てていく取り組みです。便益を言語化し、誰が触れても同じ世界観で価値を感じられる状態をつくることで、サービスは初めてブランドとして認知され、信頼されます。
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経験から培ったブランディングの進め方や、
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「ブランディング」とはなんだろう?
知られていない魅力を伝えるための活動、
あるいは、見据える未来像をはっきりさせる作業。
携わる人たちが持つ技術やプロジェクトにかける思いが、
アウトプットへと結集していきます。
一言では説明できないからこそ、
そのプロセスは普段語られる機会があまりありません。
アウトプットが物語ることの素晴らしさを大切にしながらも、
「ブランディング」が持つ多様な側面を伝えたい。
FuFuFu Laboは、プロジェクトの背景とブランディングの
基礎知識の両面から、ブランディングをひもとくメディアです。