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2024年01月23日

ブランドの世界観や体験を統一し、共感を生み出す「ブランドガイドライン」のススメ

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記事を書いた人

ブランディングディレクター

大規模商業施設やリゾートホテルをはじめ、企業やカフェなど幅広いジャンルの案件に対し多岐にわたりブランディングを推進。『脳みそから血が出るくらい考えているか』を常に自分に問いただしながら、クライアントさえ気づけていないブランドの進むべき道や可能性、デザイン表現をご提案できるよう日々挑戦中。

1. 超重要!ブランディングのルールブック

みなさまは「ブランドデザインマニュアル」や「ブランドガイドライン」をご存知ですか?どちらも、適切なブランド運営(ブランディング)に必要な情報やルールをまとめたもので、簡単に言えば「ブランドのルールブック」です。

 

多くの企業が取り入れてはいますが、『見たことはあるけれど使いこなせていない…』『デザインとか広告の時につかうものでしょ?』など思っていらっしゃる方も多いと思います。しかし、本来はブランド運営や企業活動において、会社組織に関わる全ての社員さまをはじめ、外部のパートナーや、業種などによってはお客さままでもが活用するべき、非常に重要なものです。

 

そこで今回は、「ブランドデザインマニュアル」や「ブランドガイドライン」の重要な役割やメリットをはじめ、実際に制作する場合に注意する点などについて、数多くのブランディングを担当してきたエフインクのディレクターがお答えします。

2. ブランドガイドラインとは?

このブランド運営のルールブックですが、大きく分けると「ブランドデザインマニュアル」と「ブランドガイドライン」という2種類があります。

ブランドデザインマニュアル

デザインガイドライン・CIマニュアルなどとも言いますが、ブランドロゴや、社名ロゴ、ブランドカラー、ブランドフォントなど、主にブランドのデザイン表現に関連する要素についての基本的なルールをまとめたもの。

ブランドガイドライン

ブランドロゴや、社名ロゴ、ブランドカラー、ブランドフォントなど、ブランドのデザイン表現に関連する要素についての基本的なルールをはじめ、企業理念や提供価値、トーン&マナーや写真・イラスト表現など、適切なブランド運営(ブランディング)に必要なあらゆる情報やルールをまとめたもの。

あくまで一例ですが、上の図に内容の違いをまとめてみました。「ブランドデザインマニュアル」という呼び方で内容自体は「ブランドガイドライン」ということも多々ありますし、人によってこれらの定義は多少変わりますが、これまでは多くのブランドで「ブランドデザインマニュアル」が採用されてきました。

 

しかし、お客さまをはじめとする社会とのタッチポイントや表現媒体・手法が以前に比べ格段に増加したことや、他のブランドとの違いを明確にするためにも、ブランドならではの世界観や体験を、あらゆるシチュエーションで統一感をもって提供することが重要視されるようになってからは、「ブランドガイドライン」を多くの企業が採用するようになりました。

3. ブランドガイドラインのメリット

多くの企業が採用し、注目を集める「ブランドガイドライン」ですが、どのような役割やメリットがあるのでしょうか?代表的なものをいくつかまとめてみました。

「社内」へ正しい理解と浸透を促す

ブランドガイドラインには、ブランド運営に関するさまざまな情報の中でも、最も深く大事なものが網羅されているため、ブランドへの正しい理解促進や浸透が期待できます。そのため、積極的にブランドガイドラインの存在を「社内」に告知し、理解や浸透を促す活動が重要となります。

「社外」へ正しい理解と浸透を促す

ブランド運営や企業活動には、非常に多くの「社外」パートナーがいます。特に、社外パートナーと行う場合が多い広告などの広報活動は、ブランドのイメージ形成や世界観構築などに直結します。そのため、社外パートナーにも正しい理解のもと運用いただけるよう、ブランドガイドラインを元に正しく共有することが重要となります。

運営の効率化とクオリティ向上

あらゆる正しい情報やルールが一つにまとまっているため、「社内」「社外」を問わずあらゆる方のブランドの表現への疑問や不明点がクリアになります。そのため、疑問や不明点に対する確認のやりとりなどから解放されることなどによるブランド運営の効率化や、日々の資料や広告物など様々なデザイン表現において、行うべき表現が明確になるため、デザインクオリティの向上が期待できます。

世界観や体験を統一し、共感を生み出す

ブランドと社会(お客さまや関係者などを含む全てのステークホルダー)とのあらゆるタッチポイントにおいて、ブランドガイドラインに則った世界観構築や体験の提供による、一貫したブランドコミュニケーションを続けることにより、ブランドへの共感を生み出します。ブランドへの共感はブランドへの信頼獲得やイメージ形成に直結するため、競合他社との競争においても優位になり、社会から選ばれるブランドとなります。

4. ブランドガイドライン開発に必要な「5W1H」

このようにさまざまなメリットをもたらすブランドガイドラインですが、例え全ての情報やルールをまとめたとしても、複雑でわかりづらいものや、一方的に押し付けられたものに対して人は拒否反応を示します。それらは正しいブランド運営を阻害し、十分な効果を発揮することができません。

 

ブランドガイドラインには膨大な量の情報が記載され、企業規模が大きくなればなるほど情報量も増えます。また、特定の部署や人のみが使用する要素や、特定のシチュエーションにのみ使用できる要素など、様々なルールがあります。そのため、「社内」「社外」を問わず、誰もが読みやすく、直感的に理解でき、正しく活用したくなるようにするためのポイントが「5W1H」です。

 

01. When(いつ):使用する時期・期間やタイミング

02. Where(どこで):使用する媒体などの対象物

03. Who(だれが):使用できる部署や人など該当者

04. What(なにを):01〜03に応じて使用する要素

05. What(なぜ):要素が必要な理由や01〜04のように規定されている理由

06. How(どのように):使用する場合の具体的な例示やルール

 

このように「5W1H」を意識しながら開発することで、「なぜこのルールがあるのか。どのようなブランドになっていくためにルールがあるのか?」という疑問にも答えることができるため、見てくださる方に対してより深い理解と浸透も促すことができます。

5. より迅速に誰にでも。オンラインでの管理と公開

ブランドや企業の規模が大きくなるほど、ブランドガイドラインの使用対象者の数は膨大になり、必要とされるスピードも加速します。そのような場合、社内イントラや申請などを活用したブランドガイドラインの配布では、適切なブランド運営を阻害する原因となってしまいます。そのため、特に業界をリードするような優れた企業が積極的に行なっている手法として「オンラインでの管理と公開」という手法があり、様々なメリットがあります。

 

01:常に最新版を公開することで管理を効率化できる

02:情報共有が簡単で共有負担軽減できる

03:広域的にブランドの世界観や体験を統一できる

04:社会に対して深いブランドへの理解と浸透を促す

05:優れた「知」を公開することでの社会貢献の役割

 

このように効率化的な側面はもちろん、ブランドガイドライン自体が魅力的なブランド訴求ツールとして機能することが「オンラインでの管理と公開」という手法の最大のポイントです。実際にオンラインで公開されているブランドガイドラインの参考事例をご紹介いたします。

参考事例01:SmartHR Design System

https://smarthr.design/

 

デザインの基本となる価値観をはじめ、ブランドロゴの規定はもちろん、アプリなどのUIコンポーネントや、写真や動画表現、イラストレーションなど、多岐に渡り細かくまとめられたブランドガイドライン。

参考事例02:freee

https://brand.freee.co.jp/

 

ブランドのリブランディングとともに公開されたこのページでは、背景にある想いやストーリーを中心に構成されており、ブランドへの共感を非常に促しやすいブランドガイドライン。

参考事例03:STARBUCKS

https://creative.starbucks.com/

 

ブランドに関する要素がわかりやすくカテゴライズされていながらも、文字での説明よりも絵や動きで表現されており、直感的に理解しやすいとともに、見ているだけでもワクワクする魅力的なブランドガイドライン。

6. つくって終わりじゃない!定期的なアップデートが成功の秘訣

ブランドガイドラインと聞くと「ずっと頑なに同じ情報やルールを守り続ける」必要があると思われる方も多いとは思いますが、それは違います。

 

あらゆるケースを想定して開発されるブランドガイドラインですが、想定できていない要素が運用開始後に見つかることでのルール追加はもちろん、ブランドガイドラインに則った正しいブランド運営ができていれば、自ずとブランドは進化していきますので、進化したブランドにルールも最適化していく必要があります。

 

一度つくって終わりではなく、より魅力的なブランド表現を模索しながらブランドの進化に合わせてアップデートをし続けていくとともに、常に読む側の立場になって開発し、正しく効果を発揮し続けるブランドガイドラインを目指しましょう。

記事に関連する事例のご紹介

上記リンク先の事例にて、ブランドガイドラインに関する考え方や実例などをまとめております。ぜひ合わせてご覧下さい。

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