エフインク セルフリブランディング
2024年01月12日

「ブランドロゴ」と「世界観」で魅せるリブランディング後の新たなエフインク

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全4回でお届けするセルフリブランディングストーリー #03

2023年8月に企業理念やサービスの見直しをはじめ、ブランドロゴやWEBサイトの一新など、会社全体のセルフリブランディングを行ったブランディングカンパニー「エフインク(F-INC.)」。構想から数年越しで行われたリブランディングの目的や込めた想い、デザイン表現についてなど、数多くのブランドのリブランディングを手がけてきたブランディング会社ならではの視点を交えながら全4回の記事でお届けいたします。

 

第3回目は、今回のリブランディングを経て視覚的にも新しいエフインクの誕生を印象付けた「ビジュアルアイデンティティ」について。インタビュアーの「今井 夕華」さんに、担当したブランディングディレクターの中野から当事者ならではのエピソードを引き出していただきました。

エフインクプロフィール

ブランディングカンパニー

1990年設立のブランディングカンパニー。企業やブランドの戦略立案から、ビジュアルアイデンティティの制作まで、ブランディングに関することを幅広くサポートできるのが特徴。2023年8月、会社のパーパスやDNAを新たに設定。ロゴやWebデザインも一新し、変化を遂げた。

ブランディングディレクター

中野 博文

大規模商業施設やリゾートホテルをはじめ、企業やカフェなど幅広いジャンルの案件に対し多岐にわたりブランディングを推進。『脳みそから血が出るくらい考えているか』を常に自分に問いただしながら、クライアントさえ気づけていないブランドの進むべき道や可能性、デザイン表現をご提案できるよう日々挑戦中。

1. 伝えたい思いを明確に

今回のリブランディングで、大きく変わったもののひとつがロゴデザインです。今までのエフインクと、これからのエフインク。変わっていく姿を象徴するロゴデザインですが、そこにはどんな思いやこだわりが詰まっているのでしょうか。変更前のデザインと見比べながら、開発秘話を伺います。

 

中野「リブランディングをする以前に使用していたロゴとは、約15年間ともに歩んできました。このロゴには、エフインクのブランディングを原点に立ち返らせ『顧客の満足を創る』という想いが込められていて。Fの横ラインは『幅広い見識と、業務領域を越える』、左に飛び出しているラインは『既存の壁(枠)を越える』ことを意味しています。ただ、パーパスやDNAを考える話し合いを進めていく中で、エフインクを表現するには、このままのロゴでは不十分なことも、同時に見えてきました」

次第に明確になっていく課題点。それらを乗り越え、新たなブランドを表現するためのキーワードとして、以下の4つが挙げられました。

 

①30年以上にわたる経験値に裏付けされた自信や誇り・実力があること 

②一つひとつのブランドや作品・お客さまが主役であること

③見た瞬間に飛び込んでくる強さや存在感があること

④原点かつ進化を体現し、全体でのブランド体験で魅了すること

 

中野「全体の表現やデザインは、王道感や存在感のあるシンプルかつ堂々としたものが相応しい、というのはキーワードが挙がる前から考えていたことでした。また、ロゴのデザインだけではなく『全体でのブランド体験で魅了すること』を第一に、Webサイトや名刺などのデザイン、表現の方向性を同時に検証しながら進行することを意識しました」

2. 「フォント」選びにも思いを込めて

ロゴデザインの開発と同時進行で、コミュニケーションの全てに使用される「フォント」の選択も行います。印象を大きく左右するフォントですが、見た目の良し悪しだけで簡単に決められるものではありません。フォント選びにも、中野さんらしいこだわりがありました。

 

中野「Webはもちろん、色やフォントなど全てにおいて思いを込めたい、といつも考えています。今回選んだフォントは『Helvetica Now』というもの。長年世界中で使われ、みんなに愛されている姿、その上で『Helvetica』から『Helvetica Now』としてデジタル時代に合うよう、新たに生まれ変わったところ。ロゴ制作の4つのキーワードでも上がっていた『原点かつ進化』をまさしく体現していて。これしかない、と思うほど私たちにぴったりなフォントだと思いました。また、以前のロゴでは『Helvetica』を使っていたこともあり、その思いを受け継ぐという意味でも、このフォントが最もふさわしいと感じました」

日本語のフォントは「Helvetica Now」との相性を第一に、組み込まれている英語が「Helvetica」をイメージしたものとなっている「ニューセザンヌ」に決定。全体の方向性がある程度明確になり、いよいよ工程はロゴデザインの制作や細部のブラッシュアップに移ります。

 

中野「王道感や存在感がありシンプルで、さらに今までに決まったキーワードやカラー、フォント要素との調和を第一に考えて開発しました。お客さまのブランドロゴを開発する場合は、細かなパターン違いなども含めると数百案制作することもざらです。これは違うかな?と最初に感じたアイデアも、形にしてみると新たな発見につながることが多くあります。また、みんなが『いい!』と言った案に対して、他の案があることで『なぜいいのか?』という比較ができる。良い案に対しての説得力や確信が増したりすることもあります。ブランディングをするときも、ロゴを最初に見ていただく段階においては、できるだけアイデアの幅は広く出すように心掛けていますね。加えて、Webサイトや名刺などに落とし込んだ場合の展開イメージも、案ごとに必ずセットでご提案しています。全体の調和やブランドを俯瞰してみることができ、ロゴだけで見るよりもこちらの意図が伝わる。正直非常に大変な作業ですが、毎回制作するようにしています」

3.「つくって終わり」にしない工夫を

いくつかの案の中から、最終的にメンバーの満場一致で決まったというのが今回のロゴ。新しくなったロゴに込めた思いを伺います。

 

中野「変更前と変更後で大きくデザインが違うので、今までお付き合いのあるお客さまにも、エフインクの進化や新たなメッセージがしっかり伝えられると思います。また、頭文字の『F』には『function(社会に機能する)/future(未来思考を持つ)/fun(遊び心を忘れない)』という意味を込めているのですが、それらを一層シンボリックに象徴できるデザインにしました。横に伸びた造形は、『お客さまや社会と共に、長く愛され、成長し続けるブランドをつくりたい』という意思を表現しています」

見えない工夫がたくさん隠されたロゴデザイン。今回のエフインクのブランドロゴには、「神の比率」とも呼ばれる「白銀比」が用いられていました。

 

中野「ブランドロゴはつくってからがスタートです。そのために『変更前のデザインを継承する』『デザインやブランドカラーにブランドに沿った意味性を盛り込む』『ブランドロゴの説明ツールを配布する』『適切な管理を促すマニュアルを制作する』など、ブランドに合わせた仕掛けを用意します。今回はそのひとつとして、 デザインに『白銀比』を取り入れました。『およそ1:1.414(5:7)』の比率で『大和比』とも呼ばれるものです。 日本最古の木造建築である法隆寺金堂や五重塔、伊勢神宮などの建築物や、平安京の街並み・彫刻・生け花にもこの比率が多く取り入れられているそう。造形として美しく見えるということはもちろん、日本で大切にされてきた想いやホスピタリティ精神なども、お客さまに提供していきたいという思いを込めました」

4.エフインクを表す「色」の表現

フォントやロゴデザインに加えて、エフインクらしい「色」を探していく工程も、必要不可欠。色彩が企業の印象に与える影響はとても大きいと言われています。ではブランドカラーの選択は、どのような流れで行われるのでしょうか。制作プロセスを振り返ります。

 

中野「具体的な場面を想定しながら、考えるようにしています。まずは、最も重要なコンテンツであるWebでのCASE STUDY(作品・実績)をどのように表現していくか。目に留まり、わかりやすく伝わるよう作品や実績を大きく表示して、一つひとつが引き立つような表現を行うことを考えました。その上で最初に決めたのは全体のカラー表現。今まではブランドカラーの黄色をメインに、全体的に温かく親しみやすい印象を強くしていました。ただ、作品や実績によっては黄色が合わない場合もあります。そこで全てを包括できる中間色の『グレー』と『ブラック』を今回のメインカラーに決め、作品や実績がより引き立つようにしました」

選ばれた「グレー」と「ブラック」。その2色にも、エフインクらしい仕事の考え方が垣間見えます。

 

中野「改めてうちってどんな存在だろう、と考えたとき『裏方』だなと思ったんです。あくまで主役はお客さまのブランドや作品で、私たちはそれを支える裏方。今までの黄色に代わって、何色でも合うといわれる中間色のグレーを使うことに決めました。ただ、黄色も約30年間私たちの思いの象徴として、共に歩んできた大切な色。だからこそ、一切使用しないのではなく、注目してほしい箇所を示すポイントカラーとして使うことにしました 」

今回のリブランディングを経て、改めて見えたブランディングに対する思いやエフインクらしさ。それらがたくさんの工夫とともにかたちを変え、デザインに落とし込まれました。パーパスやDNAに加え、ビジュアルアイデンティティからも、新しく生まれ変わるエフインクの未来を感じ取ることができます。

 

次回の記事では、Webサイト制作に関わった「株式会社ingraft」のお二人に話を伺います。お客さまに会社の思いや仕事を伝える、最も重要な手段であるWebサイト。リブランディングを経て決まったエフインクのこれからを、Webサイトではどのように表現していくのでしょうか。

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上記リンク先にて、事例の課題や提案内容・成果をはじめ、実際のデザインなどブランディングの詳細をご紹介しております。記事と合わせてぜひご覧下さい。

記事を書いた人

ライター

編集者、バックヤードウォッチャー。アーティスト、研究者、専門家、職人さんなど「何かが大好きでたまらない人」たちの専門的な話を分かりやすく伝えています。人間味あふれるバックヤードが大好きです。

カメラマン

株式会社アフロ入社後写真部アシスタントとして勤務。その後ビーム・バイ・テンへ入社し、フォトグラファー佐藤孝仁氏に師事。以降フリーランスとして活動した後、目黒区柿の木坂に個人事務所 Studio Functionを設立。

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